ノエマティカについて
学生:まず、御社のビジョンと会社の成り立ちを教えてください。
鈴木様:私たちのビジョンは「意思決定の重さを軽くする」ことです。現場が“いま決められる状態”をつくるため、データの収集・連携・可視化・運用までを一気通貫で支援しています。創業期は受託開発が中心でしたが、現場で繰り返し見えた課題をプロダクト化し、現在はSaaSとコンサルティングの二本柱でご提供しています。
田中様:そのビジョンを実装に落とす鍵は「運用で耐える設計」だと考えています。要件定義の段階から可用性・監査・コスト・セキュリティを織り込み、見栄えよりも“明日から現場で使い続けられること”を最優先にしています。
主力プロダクト「Noema Hub」とは?
学生:自社SaaSについて詳しく教えてください。
田中様:「Noema Hub」は、分散した業務システムやセンサーのデータを安全に取り込み、ノーコードに近い体験でダッシュボードやアラートを作成できるプラットフォームです。ロールごとの権限や監査ログは最初から搭載しており、製造分野では設備の異常傾向検知、医療分野では待ち時間の可視化と人員配置の最適化に役立っています。業種テンプレートをご用意していますので、導入直後から成果を出しやすい点が強みです。
技術スタックと設計思想
学生:技術選定とアーキテクチャの考え方をお聞かせください。
田中様:クラウドはAWSとGCPを案件に応じて使い分けています。IaCはTerraform、コンテナはKubernetes、バックエンドはGoとNode.js、フロントはTypeScript+Reactを主に採用しています。データはBigQueryやSnowflake、ストリーム処理を組み合わせています。MLOpsはVertex AIやSageMaker、MLflowを状況に応じて選択しています。私たちは“流行”より“運用で壊れにくいこと”を重視し、先にSLOを定義して設計で守る方針を徹底しています。
鈴木様:新人研修でも最初に「SLOと非機能要件」を学んでもらいます。障害が起きた際の検知・復旧・原因追跡までの導線が設計図に描けているかを理解してから実装に進むことで、習熟速度が大きく高まると考えています。
現場で生まれた具体事例
学生:印象的なプロジェクトを教えてください。
田中様:救急搬送の可視化プロジェクトが印象に残っています。病床データと搬送状況を30秒以内に更新する要件がありましたので、イベント駆動と多段キャッシュで遅延を吸収する設計にしました。UIは地図とタイムラインを組み合わせ、看護師の方が片手でも操作しやすいように選択肢を三つまでに整理しました。導入後は待機時間のばらつきが縮小し、シフト再設計にもつながりました。社会的な手応えを感じられる案件でした。
仕事の進め方とカルチャー
学生:チーム運営や会議文化の特徴を教えてください。
鈴木様:会議は原則30分で、前日までに資料を共有し当日は意思決定に集中します。議事はNotionで全社公開し、レビューは役職に関わらず「この判断がユーザー価値に沿っているか」まで踏み込んで行います。スプリントごとに“やめる条件”を明文化することも重視しています。捨てる基準があることで、切り返しが速くなり、結果として品質と速度の両立につながっています。
新卒育成と評価
学生:入社後の育成プロセスを教えてください。
鈴木様:3カ月間のブートキャンプを実施しています。1カ月目はクラウドとセキュリティ、コスト設計の座学とハンズオン、2カ月目は小規模APIの設計・実装・テスト・CI/CD、3カ月目は実案件へのペア参加で、要件整理やドキュメント作成までを担当してもらいます。毎週1on1で学習計画をアップデートし、着実に力をつけていただきます。
田中様:評価は「成果×プロセス×共有」で見ています。コード量ではなく、設計の質や運用改善、再現性のある知見の共有を重視しています。入社半年で“小さな機能の設計からリリースまで”を一人称で回せるようになることを合格ラインとし、そこから担当領域を段階的に広げていただきます。
インターンと選考で見るポイント
学生:選考では何を重視していますか。
鈴木様:テクニカル課題の正解数より、課題の切り分け方と検証設計を重視しています。再現手順・観測事実・試したことを簡潔にまとめられる方は強いです。コミュニケーションも評価対象で、PRの説明や設計判断の背景に「なぜそうしたか」を添えられるかを拝見しています。インターンでは疑似データを使って“要件→実装→振り返り”を2~3週間で体験していただき、最後に意思決定の理由を言語化したレポートを提出していただきます。
セキュリティとデータガバナンス
学生:個人情報や生成AIの取り扱い方針を教えてください。
田中様:ゼロトラストを前提に最小権限と監査ログを徹底しています。個人情報は匿名化・疑似化を基本とし、学習データの目的外利用を防ぐプロセスを整備しています。生成AIの活用については利用ポリシーを明文化し、入力データの分類や持ち出し制限、監査の仕組みを先に整えています。信頼を損ねてまで開発を急がないことを社内で共有しています。
文系・未経験でも活躍できる?
学生:理系出身でなくてもやっていけますか。
鈴木様:問題ありません。SQLとGitの基礎、HTTPの理解、簡単なREST APIの実装ができるレベルまで学習していただければ、入社後の吸収は十分に可能です。言語化や要件整理が得意な文系出身の方は、現場との橋渡し役として大きな強みを発揮できます。
田中様:さらに一歩進めるなら、クラウド料金の感覚を早めに身につけていただくことを推奨します。同じ機能でもアーキテクチャ次第でコストは大きく変わります。小さく動かして請求明細を確認する習慣が、設計の勘所を養う近道だと考えています。
新人がつまずくポイントと乗り越え方
学生:最初に陥りやすい失敗と対策を教えてください。
鈴木様:完璧な設計が固まるまで手が動かない、という悩みがよくあります。まずは最小の実装を出し、レビューで学びを得ることをお勧めします。質問は「現象・試したこと・仮説」の三点セットで共有すると、チームからの支援が得やすくなります。
田中様:作り込みすぎもよくある落とし穴です。最小で出して検証し、必要なら捨てる勇気を持っていただきたいです。良い設計は“捨てやすさ”まで含めて設計されていると考えています。
働き方と福利厚生
学生:ワークライフバランスについて教えてください。
鈴木様:フレックスのハイブリッドワークを採用しており、週1回の“スプリント同席デー”のみ出社としています。残業は月10~20時間が目安です。書籍・カンファレンス費用の補助、資格取得支援、地方ワーケーション制度も整えています。休暇は“投資”と捉え、長期休暇の推奨期間をカレンダーで明示しています。
キャリアの広がり
学生:将来のキャリアはどのように描けますか。
田中様:スペシャリストとPMの両路線をご用意しています。四半期に一度の異動希望制度により、プロダクトからデータ基盤へ、コンサルからエンジニアリングへといった越境も可能です。評価面談では「次の半年でやめること・続けること・始めること」を三つに絞り、具体的な行動計画に落とし込んでいますので、次の一手が曖昧になりにくいと感じています。
学生への具体的アドバイス
学生:今日から始められる学習方法を教えてください。
鈴木様:毎週“動く成果物”を出すことをお勧めします。例えば「天気API→DB保存→グラフ表示→毎日自動実行」をクラウドで動かし、READMEに意思決定の背景を簡潔に記載してください。積み重ねるほど、面接での説明力が強化されます。
田中様:同じ題材を別アーキテクチャで作り直す練習も有効です。キューを挟む構成、サーバレス構成、コンテナ常駐構成などを比較し、SLOやコストの差を観察していただくと、設計の勘所が短期間で身につきます。
ノエマティカのこれから
学生:今後の展望を教えてください。
田中様:非構造化データも安全に「運べる・探せる」基盤をさらに強化していきます。権限と監査を自動で組み込み、各業界のベストプラクティスをテンプレート化することで、導入までの時間を半分にすることを目指しています。
鈴木様:人材面では、設計・実装・運用・データを横断できる“越境人材”を増やしていきます。いつでも主語をプロダクトに置き、ユーザー価値を基準に議論できる人を育成したいと考えています。就職活動は相性探しです。私たちは次の挑戦者を歓迎しています。